テンソルの性質 その8 テンソルの不変量

連続体力学

テンソルの主値と主軸

前回のこちらの記事で、異なる固有値λiに対応する固有ベクトルϕiは直交することを示しました。それでは次のような、式を使って、固有ベクトルの長さを1にして、基底ベクトルを作りましょう。

ei¯ϕi|ϕi|

なお、上の式では総和規約は使いません!

この作った基底ベクトルも互いに直交するので、次式が成り立ちます。

ei¯Xej¯=δijλiei¯ej¯

つまり、i=jのときだけ、値を持つということですね。

ここで

ei¯Xej¯X¯ij

とすれば、

X¯11=λ1,X¯22=λ2,X¯33=λ3,

X¯ij=0(ij)

となります。

上式のようにテンソルの成分を変換するような基底は存在し、この際のテンソルの固有値を主値、固有ベクトルからなる基底を主軸と呼びます。

テンソルの不変量

主軸を使ったテンソルのディアディック表示と正定値テンソル

主軸を使ってテンソルをディアディック表示すると次のように書ける。

X=λi(ei¯ei¯)

テンソルXに任意のベクトルbを左右から作用させると

Xb=λi(bei¯)ei¯

bXb=λi(bei¯)2

ここで次の式を満たすテンソルXは正定値テンソルと呼ばれます。正定値テンソルの重要な性質としてすべての固有値λi>0でなければなりません。逆に、すべての固有値が正ならば、そのテンソルXは正定値テンソルと呼べます。

テンソルの固有値問題のディアディック表示と不変量

この記事で示したように、テンソルのディターミナントの性質を利用すると次のように式展開ができます。

det(XλI)=eijk(X1iλI1i)(X2jλI2j)(X3kλI3k)

ここで、単位テンソルIの成分Iijδijであること注意してこの式を展開しましょう。すると

det(XλI)=e123(X11λ)(X22λ)(X33λ)+e132(X11λ)X23X32+e231X12X23X31+e213X12X21(X33λ)+e312X13X21X32+e321X13(X22λ)X31

となります。ここで、エディントンのイプシロンに注意して式をまとめると次のようになります。

det(XλI)=λ3+λ2(X11+X22+X33)λ(X11X22+X22X33+X33X11)+λ(X12X21+X23X32+X13X31)(A)+eijkX1iX2jX3k

上式の最後の行は、テンソルのディターミナントの定義式より、λとの掛け算にならない項はそのままdetXになることから導けますね。

このように式展開をすると、結局のところ次のようなλについての3次式で表現できることが分かります。

det(XλI)λ3+I1λ2I2λ+I3=0

これらを1次、2次、3次の不変量と呼びます。

テンソルの不変量のテンソルの成分による表現

1次の不変量I1は式(A)より

I1=X11+X22+X33=Xii=trX

となります。

また、2次の不変量I2

I2λ=λ(X11X22+X22X33+X33X11X12X21X21X32X13X31)=λ12((Xii)2XijXji)

となる。

ここで、上の記事の関係を利用すると

tr(XY)=XikYki

tr(X2)=XikXki

より、

I2=12((trX)2tr(X2))

となります。トレースなどテンソルの性質を利用するときれいに書けるのがうれしい。。笑

最後にテンソルの第三不変量I3

I3=detX

となります。まとめると

I1=trXI2=12((trX)2tr(X2))I3=detX

となります。これらは、テンソルそのものに関連する値なので、座標系の選択には依存しません。このため、「不変量」と呼ばれます。

テンソルの不変量の固有値による表現

次に3次方程式の根と係数の関係から、テンソルの不変量を表してみましょう。

f(λ)=λ3+I1λ2I2λ+I3=0

この解がλ1,λ2,λ3のとき、

f(λ1)=f(λ2)=f(λ3)=0

となります。したがって、f(λ)を因数分解すると、

f(λ)=(λλ1)(λλ2)(λλ3)

と書けますね。

これを展開すると

(λλ1)(λλ2)(λλ3)=λ3I1λ2+I2λI3

なので、左辺を展開すると次のような関係が得られます。

I1=λ1+λ2+λ3I2=λ1λ2+λ2λ3+λ3λ1I3=λ1λ2λ3

となります。これで、固有値が分かれば、テンソルの不変量を計算できるようになることが分かります。

まとめ

不変量のテンソル成分による表現

I1=trXI2=12((trX)2tr(X2))I3=detX

不変量の固有値による表現

I1=λ1+λ2+λ3I2=λ1λ2+λ2λ3+λ3λ1I3=λ1λ2λ3

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