この記事ではテンソルの座標変換について説明します。
ベクトルの座標変換
ベクトル\(\vec{b}\)を基底\(\vec{e_i}\)と\(\bar{\vec{e_i}}\)から見たとき次のように書けます。
\[b_j\vec{e_j} = \bar{b}_i\bar{\vec{e_i}} \tag{a}\]
方向余弦\(P_{ij}\)は次式で定義されます。
\[\bar{\vec{e_i}}\cdot\vec{e_j} \equiv P_{ij}\]
さて、式(a)と\(\vec{e_k}\)との内積をとると、
\[\begin{align}b_j\vec{e_j}\cdot\vec{e_k} &= \bar{b}_i\bar{\vec{e_i}}\cdot\vec{e_k} \\ b_j \delta_{jk} &= P_{ik}\bar{b}_i \\ b_k &= P_{ik}\bar{b}_i\end{align} \tag{b}\]
となりますね。同様に式(a)と\(\bar{\vec{e_k}}\)との内積をとると、
\[\begin{align}b_j\vec{e_j}\cdot\bar{\vec{e_k}} &= \bar{b}_i\bar{\vec{e_i}}\cdot\bar{\vec{e_k}} \\ b_j P_{kj} &= \delta_{ik}\bar{b}_i \\ b_j P_{kj} &= \bar{b}_k\end{align} \tag{c}\]
となります。添え字の順番に注意しましょう。
式(b)と(c)より
\[P_{kj}P_{ik}\bar{b}_i = \bar{b}_k\]
が得られるので、
\[P_{kj}P_{ik} = \delta_{ik}\]
が得られる。これは、\(P_{ij}\)を座標変換マトリクス\([P]\)と表現したときに、
\[[P][P]^T =[I]\]
となることと同じことですね。このため、\([P]\)は直交マトリクス(\([P]^{-1} = [P]^T\))になります。
2階のテンソルの座標変換
ベクトルと同様に、任意のテンソル\(\vec{X}\)を基底\(\vec{e_i}\)と\(\bar{\vec{e_i}}\)から見たとき次のように書けます。
\[\vec{X} = X_{ij}\vec{e_i}\otimes\vec{e_j} = \bar{X}_{ij}\bar{\vec{e_i}}\otimes\bar{\vec{e_j}}\]
ここで、テンソル\(\vec{X}\)は任意のベクトル\(\vec{b}\)に対し、\(\vec{c}=\vec{X}\cdot\vec{b}\)となるので、ベクトル\(\vec{c}\)を 基底\(\vec{e_i}\)と\(\bar{\vec{e_i}}\) で表現すれば
\[c_i = X_{ij} b_j\]
\[\bar{c}_i = X_{ij} \bar{b}_j\]
となる。ここで、上記の式(b),(c)の関係を利用してまとめると、
\[\bar{X}_{ml} = P_{mi}X_{ij}P_{lj} \tag{d}\]
\[X_{kl} = P_{ik}\bar{X}_{ij}P_{jl} \tag{e}\]
式(d)に\(P_{mk}P_{ln}\)を乗じると
\[\begin{align}P_{mk}\bar{X}_{ml}P_{ln} &= P_{mk}P_{mi}X_{ij}P_{ln}P_{lj}\\ &= \delta_{ki}X_{ij}\delta_{jn}\\ &= X_{kn}\end{align}\]
となる。このように、2階のテンソルの座標変換には、2個の方向余弦が必要になることが分かる。
なお、ベクトルは1階のテンソルと呼ばれ、ベクトルの座標変換には1個の方向余弦が必要です。
この記事では詳しく触れませんが、n階のテンソルの座標変換にはn個の方向余弦が必要になります。