ここではテンソル場の微分について説明します。テンソル場の微分は、ガウスの発散定理の理解のためにも必要な概念で、ガウスの発散定理は物体の内部の力と表面力を記述するために必要です。
とはいえ、いきなりテンソル場の微分と言っても、わかりにくいかもしれないのでスカラー場、ベクトル場の微分について考えてから、テンソル場の微分について説明します。
場って何
スカラー
スカラー場、ベクトル場、テンソル場では、空間微分ができるものとします。つまり次のような微分が成立します。
ここで
スカラー場の微分
さて、スカラー場の微分をやりましょう。異なる座標系で同じ一点のスカラー値について考えましょうつまり、
となります。式(a)よりスカラー場の微分は
となる。これは、方向余弦の定義より、スカラー場の微分では、
と表します。ここで
と置けば見かけ上、一つのベクトルとして取り扱うことができます。また
ベクトル場の微分
次にベクトル場の微分について考えます。スカラー場と同様に、二つの座標系
となります。このベクトルの微分は
となりスカラー場の微分に比べて、方向余弦の数が増えていることが分かります。このように座標変換に方向余弦が2個必要な場合、それは2階のテンソルであるといえます。
また、ベクトル場の勾配を
ベクトルの勾配の2通りの定義
ベクトルの勾配には2通りの定義がありそれぞれ、後形と前形と呼びます。それぞれ以下に示します。
これは後形とよばれる定義です。
こちらは前形と呼ばれる定義です。
b式とc式を比べると、テンソル積の順序が後形と前形で異なります。
ここで、
以後、後形のものを中心にこのブログでは説明します。
ベクトルの発散
ベクトル
ベクトルの回転
ベクトル
となります。交代記号があると便利ですね。
2階のテンソル場の微分
2階のテンソルの座標変換では2個の方向余弦が必要でした。テンソル場の微分したものでは方向余弦が3個必要になります。つまり3階のテンソルが出てきます。
構造力学のテンソルでは3階のテンソルが2階、4階に比べるとあまり出てこないのでレアです。(どうでもいいですが笑)
2階のテンソルの勾配
2階のテンソルの勾配は次式のようになります。こちらも後形となっています。
2階のテンソルの発散
2階のテンソルの発散は次式のようになります。
2階のテンソルの回転
2階のテンソルの回転は次式のようになります。
となります。