あまり使うことがなくて忘れがちですが、この記事ではベクトル三重積とスカラー三重積について説明します。
外積の総和規約表現
ベクトル\(\vec{a}\)とベクトル\(\vec{b}\)の外積は上のリンクにも書いたように、
\[\vec{a}\times\vec{b}= e_{ijk}a_jb_k\vec{e_i}\]
と書けました。この関係をたくさんこの記事では使います。
ベクトル三重積
ベクトル三重積とは
\[(\vec{a}\times\vec{b})\times\vec{c}\]
で表現されます。ベクトルの外積の総和規約表現を利用すれば
\[(\vec{a}\times\vec{b})\times\vec{c}= e_{ijk}a_jb_k\vec{e_i}\times c_l\vec{e_l}\]
となる。さらに式展開を続けよう。
\[\vec{e_i}\times\vec{e_l}= e_{mil}\vec{e_m}= e_{ilm}\vec{e_m}\]
となりますね。(真ん中の式から右側の式への変換は偶置換に注意しましょう)
これを利用すると
\[(\vec{a}\times\vec{b})\times\vec{c}= e_{ijk}e_{ilm}a_jb_kc_l\vec{e_m}=e_{jki}e_{lmi}a_jb_kc_l\vec{e_m}\]
ここで、
で示した関係を利用すると
\[e_{jki}e_{lmi} = \delta_{jl}\delta_{km} -\delta_{jm}\delta_{kl}\]
より左辺は
\[\begin{align}(\vec{a}\times\vec{b})\times\vec{c}&= (\delta_{jl}\delta_{km} -\delta_{jm}\delta_{kl})a_jb_kc_l\vec{e_m}\\ &= \delta_{jl}\delta_{km} a_jb_kc_l\vec{e_m}- \delta_{jm}\delta_{kl}a_jb_kc_l\vec{e_m}\\ &=a_jb_kc_j\vec{e_k}-a_jb_kc_k\vec{e_j}\\ &= (\vec{a}\cdot\vec{c})\vec{b} -(\vec{b}\cdot\vec{c})\vec{a}\end{align} \]
と式変形できますね。このため、ベクトルの三重積は\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)が定める平面上にあるベクトルとなっていることが分かります。
\[(\vec{a}\times\vec{b})\times\vec{c}=(\vec{a}\cdot\vec{c})\vec{b} -(\vec{b}\cdot\vec{c})\vec{a} \]
スカラー三重積
スカラー三重積\([\vec{a}\vec{b}\vec{c}]\)は次のように定義される。
\[[\vec{a}\vec{b}\vec{c}] \equiv (\vec{a}\times\vec{b})\cdot \vec{c}\]
\[\begin{align}[\vec{a}\vec{b}\vec{c}] &= e_{ijk}a_jb_k\vec{e_i}\cdot c_l\vec{e_l}\\&= e_{ijk}a_jb_kc_i \\ &= e_{jki}a_jb_kc_i\end{align}\]
となる。エディントンのイプシロン(交代記号)に注目すれば、次の関係も成立します。
\[[\vec{a}\vec{b}\vec{c}]=[\vec{b}\vec{c}\vec{a}]=[\vec{c}\vec{a}\vec{b}]=-[\vec{b}\vec{a}\vec{c}]=-[\vec{c}\vec{b}\vec{a}]=-[\vec{a}\vec{c}\vec{b}]\]
なお、\(\vec{a},\vec{b},\vec{c}\)が平行六面体の三辺を表すとき、その体積\(V\)は
\[V=[\vec{a}\vec{b}\vec{c}]\]
で表されます。