交代記号(エディントンのイプシロン)の積は次のような定義でした。
\[e_{ijk}=\left\{\begin{array}{l}1:i,j,kが1,2,3の偶置換\\-1:i,j,kが1,2,3の奇置換\\0:2個以上の添字が等しいとき\\ \end{array} \right. \]
交代記号は一見、何に使うの?と思われがちですが、いろんなところで利用されます。一般に次のような公式が知られているので、この記事ではその公式について説明をしたいと思います。
\[e_{ijk}e_{lmk} = \delta_{il}\delta_{jm}-\delta_{im}\delta_{jl} \tag{A}\]
\[e_{ijk}e_{ljk} = 2\delta_{il} \tag{B}\]
式(A)の導出
ここで総和規約のルールにおいてダミーインデックスは\(k\)なので、
\[e_{ijk}e_{lmk} =e_{ij1}e_{lm1}+e_{ij2}e_{lm2}+e_{ij3}e_{lm3}\]
となる。ここで、\(i,j,l,m\)がどの値であっても3個の項のうち2項は0となる。
また、\(i=j\)または\(l=m\)のとき、上式は0となる。
このとき式(A)の右辺は
\[\delta_{il}\delta_{jm}-\delta_{im}\delta_{jl}=\delta_{il}\delta_{im}-\delta_{im}\delta_{il}=0\]
となるので、右辺=左辺
上式が0とならない組み合わせとしては、
\(i\neq j\)かつ、\(l\neq m\)のときなので、\((i=l , j=m)\)か、\((i=m, j=l)\)の場合がありうる。\((i=l , j=m)\)の時は
\[e_{ijk}e_{lmk} =e_{ij1}^2+e_{ij2}^2+e_{ij3}^2=1\]
右辺は
\[\delta_{il}\delta_{jm}-\delta_{im}\delta_{jl}=\delta_{ii}\delta_{jj}-\delta_{ij}\delta_{ji}=1\]
となるので、この場合も右辺=左辺
\((i=m, j=l)\)の場合は左辺は
\[e_{ijk}e_{lmk} =e_{ij1}e_{ji1}+e_{ij2}e_{ji2}+e_{ij3}e_{ji3}=-1\]
右辺は
\[\delta_{il}\delta_{jm}-\delta_{im}\delta_{jl}=\delta_{ij}\delta_{ji}-\delta_{ii}\delta_{jj}=-1\]
となる。この場合も左辺=右辺
式(B)の導出
\[\begin{align}e_{ijk}e_{ljk}&=\sum_{j=1}^3\sum_{k=1}^3e_{ijk}e_{ljk}\\&=e_{i11}e_{l11}+e_{i12}e_{l12}+e_{i13}e_{l13}\\ &+e_{i21}e_{l21}+e_{i22}e_{l22}+e_{i23}e_{l23} \\ &+ e_{i31}e_{l31}+e_{i32}e_{l32}+e_{i33}e_{l33} \end{align}\]
となり、0の項を省略すれば
\[\begin{align}e_{ijk}e_{ljk}&=(e_{i12}e_{l12}+e_{i21}e_{l21}) \\&+ (e_{i23}e_{l23}+e_{i32}e_{l32}) \\ &+(e_{i31}e_{l31}+e_{i13}e_{l13}) \end{align}\]
ここで、\(i\neq l\)のとき式(B)の左辺は0, 右辺も0になるのは明らかですね。
\(i=l\)の時は、
\[\begin{align}e_{ijk}e_{ljk}&=e_{i12}^2 + (-e_{i12})^2+e_{i23}^2 + (-e_{i23})^2+e_{i31}^2 + (-e_{i31})^2 = 2 \end{align}\]
右辺も2になるのは明らかなので、左辺=右辺