テンソルの性質 その5 直交テンソル

連続体力学

テンソルの性質シリーズもその5まで来ました。「これ、何に使うの?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、9×9と同じで基本的な性質は度々戻ってくる可能性があるのでお付き合いいただけたらと思います!

直交テンソルとは次のような式を満たすテンソルとして定義されます。

\[\vec{X}\cdot\vec{X}^T = \vec{I}\]

つまり、転置テンソルと逆テンソルが同じようなテンソルを直交テンソルと呼びます。

\[\vec{X}^T = \vec{X}^{-1}\]

ここで、定義式をディアディック表示すると

\[\begin{align}\vec{X}\cdot\vec{X}^T &= (X_{ij}\vec{e_i}\otimes\vec{e_j})\cdot(X_{kl}\vec{e_l}\otimes\vec{e_k})\\&=X_{ij}X_{kl}\delta_{jl}(\vec{e_i}\otimes\vec{e_k})\\ &= X_{ij}X_{kj}(\vec{e_i}\otimes\vec{e_k})=\vec{I}\end{align}\]

ここで\(\vec{I}=\delta_{ik}\vec{e_i}\otimes\vec{e_k}\)と表記できるので、

\[X_{ij}X_{kj}=\delta_{ik}\]

となります。

また、過去記事の内容から

\(\mathrm{det}(\vec{X}\cdot\vec{Y}) = (\mathrm{det}\vec{X})(\mathrm{det}\vec{Y})\)を利用すれば、

\(\mathrm{det}\vec{X} = \pm 1\)

となりますね。

正規直交基底ベクトルの回転は直交テンソルで表現できる

見出しだけだと、意味が分かりづらいかもしれません。。

いま、2組の正規直交基底ベクトル\(\vec{e_i}\)と\(\bar{\vec{e_i}}\)があるとします。

ここで、次式で与えられる\(\vec{X}\)は直交テンソルになります。

\[\vec{X}=\bar{\vec{e_i}}\otimes\vec{e_i}\]

単位テンソル\(\vec{I}=\delta_{ij}(\vec{e_i}\otimes\vec{e_j})\)と表現できました。

ここで、\(\bar{\vec{e_i}}\cdot\bar{\vec{e_j}}=\delta_{ij}\)と表現できることを利用すると、

\[\begin{align} \vec{I} &= (\bar{\vec{e_i}}\cdot\bar{\vec{e_j}})(\vec{e_i}\otimes{\vec{e_j}})\\ &= (\vec{e_i}\otimes\bar{\vec{e_i}}) \cdot (\vec{e_j}\otimes\bar{\vec{e_j}}) \\ &= (\vec{e_i}\otimes\bar{\vec{e_i}}) \cdot (\bar{\vec{e_j}}\otimes \vec{e_j})^T \\ &= \vec{X}\cdot\vec{X}^T\end{align}\]

となります。

さて、(2階の)テンソルはベクトルを線形変換するものだと以前の記事で説明しましたが\(\vec{X}=\bar{\vec{e_i}}\otimes\vec{e_i}\)に基底ベクトル\(\vec{e_k}\)を作用させるとどのようなベクトルが得られるでしょうか

\[\begin{align} \vec{X}\cdot\vec{e_k} &= (\bar{\vec{e_i}}\otimes\vec{e_i})\cdot\vec{e_k}\\ &= (\vec{e_i}\cdot \vec{e_k})\bar{\vec{e_i}} \\ &= \delta_{ik}\bar{\vec{e_i}} \\&= \bar{\vec{e_k}}\end{align}\]

となるので、\(\vec{e_k}\)を\(\bar{\vec{e_k}}\)へ変換していることが分かるかと思います。つまり、直交テンソルは回転を表すといえます。

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